

寺島文庫展 札幌開催に寄せて
今、自分はどのような歴史の流れのなかに生きていると考えているだろうか。
世界の潮流は、今も昔も絶えず動いている。これからの世界、日本、地域や社会、あるいは自分自身がどう進んでいくべきかを考えるとき、「歴史の鏡を磨く」ことが重要な意味を持つ。たとえ我々一人一人は「大河の一滴」に過ぎなくても、大きな歴史の潮流を踏まえ進むべき方向への視界を拓かねばならない。
-「歴史は、現在と過去との対話であり、 未来につなぐ視座である」 -
今回ここに展示しているものは、単に教養を深めたり、歴史の教科書的知識を補足するものでもなければ、自身の問いに対して明確な答えを示すものでもないかもしれない。
しかし、展示を一つのきっかけにし、自分はどう受け止め、どう考え、未来に進んでいくのか、自身の思考の錬磨へとつなげてもらえればと思う。
「外は広く、内は深い」 ― 鈴木大拙が語り続けた言葉である。広く深く「全体知」 を求める努力なしに、時代の本質は見えてこない。
今回、現代の国際関係を考えるうえでも歴史的意義を持つ「地」であり、故郷でもある北海道で本展を初開催することとなった。この展示を通じて、グローバルヒストリーにつながる自分自身の世界観を拓く一助になれば幸いである。
寺島実郎プロフィール
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所所長、同会長等を歴任し、現在一般財団法人日本総合研究所会長、多摩大学学長、一般社団法人寺島文庫代表理事。国土交通省、経済産業省等、国の審議会委員も多数歴任。令和元年より札幌市市政アドバイザーも務める。
著書に、『世界認識の再構築 17世紀オランダからの全体知』、『21世紀未来圏 日本再生の構想』(共に岩波書店)等多数。また、TBS系列『サンデーモーニング』(日曜日8:00~/月2回程度)、TOKYO MX『寺島実郎の世界を知る力』(毎月第3日曜日11:00~)など、メディア出演も多数。

寺島文庫とは
-知の拠点としてアクティブに進化し続ける文庫 -
寺島実郎の「知」の集積地・発信の拠点である『寺島文庫』(東京都千代田区九段北)には、課題解決のための執筆や発信等の活動に必要なものとして、寺島自らが世界各地で集めた文献や歴史的に価値のある史料等が収蔵されています。
2009年4月に開設して以来、文献の集積や知的生産・発信の場であるだけでなく、時代に積極的に関わろうとする仲間の情報交流、知的相互啓発の拠点ともなってきました。
論語にある「北辰の其の所に居て、衆星のこれに共(むか)うがごとし」の言葉のように、寺島文庫には志の高い人々が集い、様々な研究会、勉強会、人材養成のプログラムが開催されており、それぞれ特徴をもったクラスター・付加価値が生まれてきました。
寺島文庫の原点
1981年〜
始まりは、寺島実郎が大学生時代から約40年程を過ごした世田谷区駒沢の自宅の離れに1981年に建てられた書庫。サラリーマン生活をしながら、研究と文筆活動で増える文献の集積と、友人たちとの議論等の場が原点となりました。
2009年〜現在
相互啓発の場として広く活用できるよう、都心に書庫を中核とする知的活動の基点を築くべきだと決断し、現在の寺島文庫の拠点である九段下に移転。
以降10年超のうちに、寺島文庫自体がミニアーカイブス化するなど、大きな進化を遂げ、集う多くの人と共に現在も時代と格闘し歩み続けています。


寺島文庫の今
ライブラリ 知的生産の場として…
交流拠点 シナジー創造の場として…
発信拠点 知のサークルの磁場として…
寺島文庫
https://www.terashima-bunko.com/
人数、日時等によりご希望に沿えないことがあります。予めご了承ください。
- 開催期間/
- 会場/
- 札幌市民交流プラザSCARTSコート
札幌市中央区北1条西1丁目札幌市民交流プラザ1階 - 入場料/
- 500円(学生無料)
- チケット販売/
- 当日券:寺島文庫展会場受付時、現金のみでの販売となります
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ケンペル 『日本誌』英語版1727年ロンドンでの初版本
エンゲルベルト・ケンペル(1651~1716年)はドイツ出身の医師。1684年に東インド会社に入社し、1690年からの2年間長崎出島オランダ商館の医師として日本に滞在しました。その間に二度商館長に随行して江戸参府を経験し、五代将軍徳川綱吉謁見の記録も残っています。日本に関する多様な資料を持ち帰り、これが『日本誌』の草稿となりました。
なお、1801年、長崎の通訳であった志筑忠雄が本著巻末付録を『鎖国論』として翻訳したことから、「鎖国」という言葉が生まれています。
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大槻玄沢 『環海異聞』(1807年)
江戸期日本にとっての脅威にロシアの接近がありました。ペリー来航の61年も前、1792年に日本との通商を求めるロシア最初の遣日使節ラックスマンが根室に来航し、この時の対応が1804年のレザノフの長崎来航への導線となっています。『環海異聞』は、レザノフが長崎に来航した際、ロシア初の世界周遊船であるナジェジダ号に乗って日本に帰国した漂流者たちの見聞を、蘭学者の大槻玄沢(1757~1827年)がまとめたものです。漂流者は初めて世界を一周した日本人となり、その情報は鎖国時代の社会において、海外について伝える貴重な資料となりました。寺島文庫には、全16巻に付録4巻を加えた全20冊を収蔵しています。
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ペリー提督 『日本遠征記』1857年刊 (直筆サイン入り書状付き)
1853年に浦賀に来航し、日本の開国に大きな影響を与えたペリー(1794~1858年)は、1856年に議会への報告書を提出。その文書を基に『日本遠征記』を出版しました。寺島文庫所蔵の本書は、1857年にモロッコ革装丁で贈呈用に出版された特別版で、オーストラリアの蔵書家がペリーのサイン入りの書簡付きで保管していたものです。石油由来の灯油が普及する以前、アメリカでは主に鯨油を灯りに用いていましたが、アメリカは、日本に捕鯨船の薪や水・食料を確保する補給基地としての役割、及び中国との貿易の中継基地としての役割を担わせようとしていました。本著は、米国の国家戦略が日本を開国に至らせた歴史を想起させてくれます。
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『フォーチュン』1936年9月号〈日本特集〉
本誌は、タイム社社主のヘンリー・ルース(1898~1967年)が、特派員2名を日本へ派遣して体系的・総合的な分析を行ったものです。日米開戦の5年前に、本誌に収められている情報を収集、分析していることは注目に値します。
親中国派の中心人物だったルースは、自らのメディアを使ってアメリカの世論及び政策を「親中国・反日」に誘導したと言われています。第二次世界大戦を経て、1949年に中華人民共和国が建国された後は蒋介石率いる台湾国民党を支持し、ルースらアメリカのチャイナ・ロビーが共産中国の封じ込めを狙って、日本を西側陣営に取り込もうと支援したことは、日本の戦後復興を早めたと言われています。
- 主催/
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寺島文庫展(札幌)実行委員会
一般社団法人寺島文庫・公益財団法人札幌市生涯学習振興財団 - 協賛/
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寺島実郎講演会「世界史の中の北海道」
~過去から未来へ、北海道と世界をつなぐ寺島実郎の視点~
- 講演/
- 寺島実郎
- 日時/
- 2025年10月28日(火)14:30~16:00(開場14:00)
- 会場/
- 北海道大学学術交流会館 札幌市北区北8条西5丁目8 北海道大学内
- 主催/
- 札幌市教育委員会
寺島実郎ギャラリートーク
- 登壇/
- 寺島実郎
- 日時/
- 2025年11月2日(日)14:00~15:00(開場13:30)
- 会場/
- 札幌市図書・情報館1階サロン
札幌市中央区北1条西1丁目札幌市民交流プラザ1階 - 共催/
- 寺島文庫展(札幌)実行委員会 札幌市図書・情報館